皆様こんにちは、今小笠原の父島からこの原稿を書いております。
只今(3月)の気温は日中21〜25度,水温21度で年間を通しても寒い時期です。
しかし!海の中は多くのザトウクジラが訪れ、繁殖期を迎えたたくさんの生物で実は熱い時期なのです!!これをお読みになる6月ごろにはザトウクジラは島を離れ、梅雨明けと同時に小笠原高気圧とも言われる太平洋高気圧に覆われ一足早く夏に突入していきます。
さて小笠原をご存じ無い方に説明を少し。
東京は竹芝桟橋から定期船おがさわら丸で南に約1000km南下します。よく"八丈島の少し先でしょう。"と言われますが八丈島は東京から約400kmでまだ半分も来ていません。25時間30分の船旅で23時間後くらいに最初に見えてくるのが小笠原諸島最北端の聟島列島、その50km南に父島列島、さらに50km南に母島列島と続きます。
これらの島々は海底の火山が隆起して出来たもので、有史以来1度も大陸とつながったことの無い地理学用語で海洋島と呼ばれ、特殊な生態系を持ち固有種が多いのも特徴です。今現在人が住んでいるのは父島と母島だけで、逆に言うとそこ以外は全て無人島です。ダイビングで有名な"ケータ"とは聟島列島の島々のまわりのことで、その昔、小笠原は無人が訛りボニンアイランドと呼ばれ、聟島のことはケータ、南鳥島はマーカスなど。これが現在も呼び名として残っています。そのケータ周辺はダイビングでも1年の中で約半年間しか行くことが無く、未だに手付かずの海が残っている所です。
さて、亜熱帯小笠原にも四季とは言いませんが三季くらいはあり、内地(本州)で言う冬(雪の降るようなこと)はないですが、それなりに季節感はあります。水温は18〜30℃までで、20度を切るのは1年の中で1〜2週間ほどです。ただ同じ亜熱帯の沖縄よりは同時期1〜2℃低いのが普通で、これは外洋のまっただ中でまわりにとても深い海域があるためと思われます。
小笠原の1年の見どころをおおまかに言いますと、1月から4月いっぱいまではザトウクジラが繁殖のため数多くやって来ます。その数は沖縄よりも実は多く、クジラで海がとてもにぎやかなシーズンです。この時期水温は少し冷たいので5ミリ以上のスーツかドライが一般的ですが、ダイビングの合間にクジラを見ながらのお茶や、ランチなんてぜいたくも当たり前に出来てしまいます。これはザトウクジラが沿岸で生活する種類なため、ポイントのすぐ近くを通りすぎる。なんてうれしいハプニングも時折起こります。
イルカは周年島の沿岸にいてくれて、ハンドウイルカとハシナガイルカがレギュラーです。一緒に泳ぐことのできるハンドウイルカがドルフィンスイムお目当てですが、水温や透視度のベストはやはり夏の時期でしょう。
5月(GW)からはいよいよケータにも遠出する時期に入り始めます。この頃には水温上がり始めるので5ミリスーツでOKでしょう。小笠原で1番有名なポイント"マグロ穴"も1時間30分ほどのケータ方面にあります。ここは目の前に1mを超えるイソマグロが多い時には200匹!これが1ダイブ中グルグルしている世界的にもあまり例の無い所なのです。また、シロワニという小笠原でしか見ることの出来ない強面なサメや、イルカ、アオウミガメにマンタ、ウメイロモドキなどの大群にカンパチに群れ、固有種のユウゼンもこの時期繁殖のため大群を作ります。水温も25度から28度、透視度も30オーバーとダイビングには一番良い時期になります。
9月の声を聞くころからそろそろケータ方面への遠征も終盤で、この時期からはもう1種のクジラ"マッコウクジラ"の時期にはいります。このクジラはザトウクジラと違い1000m以上の深い海域にいるので、ダイビングを少し早めに切り上げ、お昼を食べながら30分ほど沖合へ出ていきます、そこにはあちらこちらにクジラの潮吹きが見え始め、子供を含む雌達の群れがこの時期ここにいてくれます。運が良いと雄のマッコウクジラに会うこともあり、その大きさには驚かされます。
そんなこんなで盛り上がっているころには、そろそろまたザトウクジラの季節が近づき、あっという間に1年が過ぎていきます。(気がつけば僕も20年経っておりました・・・。)
小笠原は他の日本の海域では見られない生物がなぜかここには普通に見る事ができ、反対に沖縄や本州南岸、八丈島などで普通に見られるのに、小笠原では見ることがない種類などもいて、水温だけではない分布の不思議に驚かされます。
これは小笠原が南海域でよく知られる海流、黒潮の影響をほとんど受けないことも影響しているようです。それゆえ独特な日本の海がここにあります。是非皆さんも1度小笠原へ来てみてはいかがでしょうか。船旅25時間30分、週1便なんて島がまだ東京にもあります。だからこそ残っているものもありますそれでは続きは父島で・・・。